東京大学フランス語受験(全仏)備忘録 参考書集

はじめに

2024年度東京大学学部入試を第二外国語(フランス語)で受験してきました。差し替えではなく全仏です。

結論からいうと不合格でした(理科一類)。点数開示はまだですが、手ごたえはあまり良くなかったです。勉強スタイルを確立するのに時間がかかり、単語と仏作文を詰め切れなかったのが原因です。

追記:開示得点66/120点でした。知識のインプットが不足した状態でもこの点が取れたので採点は優しめと思われます。

 

東京大学第二外国語受験について問題形式等の詳しい話は合格したらまた書くとして、ここではフランス語を勉強していて良いと感じた参考書を紹介していきます。全仏・差し替え問わず、東大フランス語受験を考えている人の参考になれば幸いです。
リスニング・スピーキングに関してはノータッチなので悪しからず。

 

 

準備編

東京大学 フランス語 過去問
これが無いと始まりません。国会図書館で東大新聞のバックナンバーを複写できます(有料)。自分は27年分複写して、料金は3000円ちょっとでした。複写には時間がかかるので、時間に余裕を持って行くことをおすすめします。問題・解答が載ってない年もたまにあります。
今すぐ問題が見たいのであれば、ここ数年分であれば東大新聞オンラインで購入することができます。
 
共通テスト フランス語 過去問
朝日新聞のサイトに過去問が載っています。2012年分までは掲載を確認しています。
 
仏和辞典
『PETIT ROYAL(プチロワイヤル)第5版』 アプリ版
自分はiPadで使いました。後述しますが、付録の単語集が優秀なのでアプリ版をお勧めします。
仏和辞典は必須ですが、和仏辞典はあまり使わなかったので不要と思います。
 
文法集
『これなら分かるフランス語文法 入門から上級まで NHK出版』六鹿豊
あるいは
『現代フランス広文典』目黒士門
フランス語の文法項目を網羅した文法集。NHK出版の方は若干色が付いててデザインが凝っています。ただ、自分は広文典の方が白黒でシンプルで見やすいと感じました。好きな方がどちらか1冊あると良いです。
 
パソコン、タブレット端末、スマホインターネット環境
フランス語を勉強していく中で、分からないことが色々出てくると思います。すぐに調べられるようにしておくと良いです。
ChatGPT、DeepL、Google Lens等のツールは積極的に活用していくべきでしょう。
 
 

初級編

『新・リュミエール フランス文法参考書』森本 英夫、三野 博司
これからフランス語を始める人向けの教科書としてこれ以上のものは無いでしょう。初学者に必要な文法事項は一通り載っており、演習問題も豊富です。まずはこれを2周すると良いと思います。
大学の二外でフランス語を選んだ人で、教科書が意味不明という人は、リュミエールやった方が絶対いいです。
追記:15章、16章は「直接法単純過去」「接続法半過去」の項目ですが、これはフランス語の古風で文語的な表現で、フランス人が小説を書いていてカッコつけたい時に使うものです。日常会話では使われません。過去27年の東大フランス語で出てきた記憶はないので、やらなくても良いでしょう。フランス語検定仏検)でも範囲外になっています。
もっとも、小説ではよく出てくるので、フランス語の小説をバリバリ読んでいきたいという人はやるとよいです。
 
『〈データ本位〉でる順仏検単語集5級~2級準備レベル』久松 健一 
仏検2級準拠[頻度順]フランス語単語集』川口 裕司 
単語力は語学の基本です。ここら辺に出てくる単語は仏作文でもよく使うので、意味も綴りも押さえておくとよいです。
また、東大フランス語では熟語表現も問われるので、熟語に関しても注意して覚えるとよいです。
 
『中級をめざす人のフランス語文法』杉山 利恵子
登場人物が語る形式で、フランス語の短めの文章と日本語訳が30個載っています。日本人的に分かりづらい文法の解説もあり、ありがたいです。フランス語の文章を読む練習はこの本から始めるとよいと思います。
 
『清岡&レナ式 フランス語初級卒業講座 文法が好きになる1200問』清岡 智比古、 レナ・ジュンタ
基本文法を固めたい人におすすめ。リュミエールの演習問題が余裕で解けるという人には不要かも。
ちなみに、初級者向けの文法問題集は沢山あるので、他に気に入ったものがあればそちらでも全然かまわないです。
 
 
動詞の活用を覚える
フランス語は動詞の活用が難しいとよく言われます。実際、活用の種類が多く、英語より10倍くらい面倒です。
「新リュミエール」の巻末の動詞活用表を見ながら、まずは次を覚えるとよいと思います。
"être","avoir","aimer"の3語の直接法現在、直接法半過去、直接法単純未来、条件法現在、接続法現在
●活用表に載ってる全ての動詞の直接法現在、過去分詞
とりあえずこれらを覚えれば、後は推測で活用が書けるようになります。他は演習中に間違った時にその都度覚えていけばいいかと思います。
 

中級編

プチ・ロワイヤル アプリ版 付録 重要語ランク3
初級編に挙げた2冊の他にも単語帳はいくつもありますが、正直どれも東大フランス語を読むには語彙が足りないと感じます。
自分が最も良いと感じたのは、上記の仏和辞典『プチロワイヤル』アプリ版の付録にある「重要語ランク3」です。約3000語あります。ここにあるものを全て覚えれば、語彙は十分です。
ただ、画面を眺めるだけで暗記するのはかなり厳しいかと思います(自分はできませんでした)。
自分はこれらの単語を暗記するために、「Anki」という単語帳アプリを使いました。記憶の定着度に応じて、アプリが適切なタイミングで問題を出してるので、効率的で効果的な反復学習が可能になるというものです。
ちなみにAndroid版とPC版は無料、iOS版は3500円します。
Ankiのカードの作り方の手順ですが、
iPadに映った単語の一覧を、スマホGoogle Lensで片っ端から読み取る。
②読み取ったものを対話AIに読み込ませ、意味と品詞をリストアップさせる。
③これをPC版のAnkiアプリで読み込む
という手順を取りました。面倒ですが、単語の暗記効率が格段に上昇するのでやる価値はあります。
(東大フランス語に対応できる市販の単語帳がもし存在すれば、コメントで情報提供してほしい)

チャットAIに仏単語の意味をリストアップさせ、Ankiに入れている様子
 
 
他にも、単語帳で覚えられなかった単語、熟語、また文章中で分からなかった単語等を片っ端から詰め込んでいくと良いかと思います。
 
仏検対応 クラウン フランス語熟語辞典』 久松健一
熟語・重要表現が2100個あまり載っています。熟語集の決定版と言っていいです。これを覚えれば東大フランス語第3問で無双できます。また、前置詞の解説等も載っています。
言うまでもないことですが、単語・熟語の暗記は時間がかかる部分ですので、早期から計画的に取り組んでいくべきでしょう。
 
共通テスト/センター試験 過去問
共通テストの過去問は、演習教材として丁度いいです(第2問は出題意図がよく分からないけど)。仏検で言えば2級程度の難易度です。ただ、解答はあっても解説が無いので、自分で調べる必要があります。Youtubeで解説動画出してる方もいるので参考にするとよいです。
 
『表現パターンを身につけるフランス語作文』 塩谷祐人
各種表現例と練習問題があり、仏作文の手始めにやるとよいです。簡単なので必須ではありません。
 
『仏文和訳の実際』倉田 清
個人的には東大フランス語に向けて一押しの参考書。前半には各文法事項に対する例文と日本語訳が計641個あります。和文仏訳の練習問題としてかなり上出来です。ここにある文を片っ端から仏訳していけば、かなり仏作文力がつきます。フランス語の表現もかなり身に付きます。ここに載ってる文は全部暗記するくらいでも良いです(単純過去の文と偉人の名言は飛ばしていい)。後半には仏文和訳の演習問題が121題あり、こちらも面白いです。文章のレベル高めですが。
 
『フランス語作文ラボ ニュアンスで使いわけるための添削教室』クリス・アルベド
仏作文で日本人が間違いやすい各種表現を、添削例を示しながら解説しています。時間があればぜひ読みたい本。
 
仏検 準1級・2級必須単語集』モーリス ジャケ 、久松 健一
『DELF B1B2対応フランス語単語トレーニング』 モーリスジャケ
単語を覚えるのももちろんですが、フランス語の文章を読む練習という意味でおすすめです。
 
 
以上の参考書をやれば、東大フランス語は十分取り組めるレベルに達しているかと思います。東大フランス語の過去問をどんどんやっていくと良いでしょう。
年によってはかなり難しい文章が出ます(2021、2012など)。2006年以降は東大新聞が解答例を掲載していますが、たまに間違っています。違和感を感じたら、ChatGPTあるいはDeepL等で翻訳すると良いです。
 

余力のある人向け

  仏検問題集 2級以上
フランス語検定の問題集。準2級以下は簡単すぎます。
公式ガイドブックとモーリスジャケ版の2種類ありますが、やるならモーリスジャケ版を推奨します。公式ガイドブックは長文問題の全訳が無いのでイマイチです。
もっとも、問題の半分はリスニング(東大フラ語の範囲外)です。共通テストの過去問が残ってるならそっちをやった方がいいです。
 
『解説がくわしいフランス文法問題集』西村 牧夫
『フランス語文法問題の解き方(解説編)』権寧
東大は文法知識を直接問うというよりは仏作文の形で問うので、仏作文の演習を中心にすべきだと思っていますが、あえて文法問題集を解くならこのあたりでしょうか。
余談ですが、文法問題は共通テストも東大も過去に出した問題を再び出す傾向があるので、まずは過去問を押さえるとよいです。
 
『中級フランス語 あらわす文法』 東郷雄二
冠詞、代名詞、時制等で細かい使い分けの解説が載っており、仏作文をしっかり理解したい時に有効。
 
アポリネールのコント』 大学書林
名著。アポリネールという小説家の書いた作品「オノレ・シュブラックの失踪」「アムステルダムの水夫」を3~4行ずつ取り上げて読んでいくのですが、文法・表現の解説量が圧倒的です。フランス文学の真髄に触れたい人は是非。
 
『名作短編で学ぶフランス語』尾河 直哉
フランスの文学作品11話と、日本語訳を収録。価格が高騰していますが、それに応じたボリュームはあります。
 

その他

教科書を読むだけでなく、実際に使われているフランス語に触れるのも有効な勉強法でしょう。
 
フランス語のニュースサイトを見る
Le monde, Le Figaro, franceinfoなど。主要メディアに限らず、スポーツ音楽芸術等自分が興味ある話題を扱ってるサイトを読むとよいでしょう。
 
ポケットモンスター スカーレット・バイオレット(フランス語)
XY以降のポケモンであれば他言語でプレイできます。言ってる内容が分からなくてもとりあえず進めるのはゲームの良いところであり悪いところでもあります。

ここに3匹のポケモンがいるじゃろう?
 
マクロン大統領 公式Twitter
フランス語のリアルタイムの呟きを見れます。マクロン大統領でなくとも別に誰をフォローしてもいいですが。
毎日自分でフランス語で呟くのも良いです。
 
 

終わりに

以上、自分が良いと感じた参考書を一通り並べました。無論、自分が全て解ききれた・暗記できた訳ではありません(できたら合格してる)。国会図書館で軽くチェックしただけのものもあります。全部買うと3~4万(+国会図書館への交通費)がかかるでしょうか?自分がまだ見てない参考書も多くありますし、各自良いと思える参考書を探してもらえればと思います。
 
東大をフランス語受験したいという物好きな方がもし居れば、健闘を祈ります。